2017年5月10日水曜日

新型BMW5シリーズの「毀誉褒貶」 福野礼一郎氏の場合。

  「世界で最も重要なモデルってなんだ!?」・・・累計販売台数という古典的な数字を持ち出すならば、カローラ、シビック、ゴルフなんでしょうけども、ちょっと目線を変えて考えてみましょう。日本の若者がなんとなく知っていてあこがれている自動車ブランドといえば・・・BMW。その中で最も重要なモデルといえば、販売台数ならば3シリーズなんです。それでもやはりブランドのイメージを背負った看板モデルといえば5シリーズ。

  私が免許を取得したのは2000年頃で、その当時(私の脳裏で)最も輝いていたクルマは、R34GT-R、NSX、RX7FD3S (記号と数字ばっかりでどこの車かわからん) ではなく、996でも360モデナでもなく、なんとBMW・M5(E39)。学生の頃に入手したとある雑誌の特集を見て、大まかな世界の高性能車の実力がわかり一気に世界が広がりました、最強の公道車を決めるというありがちな企画なんですが、5部門あるうちの2部門の『メンツ』がなかなか凄いです。

  4WDスポーツ部門の顔ぶれは、アウディRS4アバント、三菱ランエボⅥ、日産スカイラインGT-R(34)、スバルインプレッサWRX-P1 なんだこの「粒ぞろい」な感じは!!スーパーカー部門(360モデナ、Z8、エキシージ、TVRタスカン)よりずっと熱い!!というか暑苦しい!!当たり前だけど、コーナーの立ち上がりならポルシェにも完勝レベルの4台です。ちなみにこのグループの1位勝ち抜けはRS4アバントでした。

  そしてグランドツアラー部門はポルシェ911ターボ(996)、アストンマーテインDB7ヴァンテージ、ジャガーXKR、BMW-M5の4台。これもかなりの「密度」ですね。現在もそれぞれブランドの後継モデルによって脈々と伝統が続く(=世界中にファンが多い)力作ぞろいとなっています。良い車・正しい車を作りさえすれば、ファンがブランドを支えてくれるんですね。

  各部門は4台中2台が決勝進出するグループリーグになっているのですが、ヘナチョコのスーパーカー部門すら勝ち抜けないBMW・Z8ではなくて、激戦の死のリーグだったグランドツアラー部門を911ターボとともに勝ち抜いたBMW・M5こそが完全に当時のBMWの「顔」といっていいと思います。しかも選考を行っているのはイギリスメディアです。イギリス人に「アストンとジャガーではとてもポルシェ、BMWの影も踏めない」とまで言わせる圧倒的な実力。輝かしい5シリーズの歴史です。

  あくまで2000年頃に免許取得という「最も多感な季節」を過ごしたゆえの見解でしかないのですが、いまもその熱は冷めやらずで、本当にE39のM5を買っちまおうかな〜・・・ちなみに中古実勢価格200万円〜くらいです。まだ発売から20年も経ってないですが、タマ数もどんどん少なくなっているし、このまま絶滅したらちょっと後悔するかもなー。当時のM5はまだMT車が主流。これなら3年乗って売却してもほとんど値落ちしないでしょうから、よっぽどの不具合でも出ない限りは、大抵の日本車よりもコスパもいいはず。(コスパがいいBMW!!とても素晴らしい響きだな!! 他にもM240iとかさ!?)

  やべー・・・新型5シリーズの話でしたがすっかり脱線しました。2000年以降の私が知る限りに関してはBMWの「看板」は5シリーズです。そしてフルモデルチェンジで、G30系になりました。E39(1996年)→E60(2003年)→F10(2010年)→G30(2017年)と見事に7年おきにフルモデルチェンジされています。E60で「顔」が一気に変わって、F10で足回りを変えて、G30では7erと別のシャシーになりました、デザイン面ではE39の面影が少し戻ってきたような「奥ゆかしさ」を感じます。

  そして福野さん得意の決まり文句が炸裂します。このライターは私のようなド素人にもクルマのキャラがよくわかるような『格言』・『至言』を作ってくれます(言葉が車を育てる!?)。その1つがこれ・・・『BMW5erはF10(先代)から高級車になり、メルセデスEクラスはW213(現行)からやっと高級車になった。』・・・この何気ないこの一言に含まれる意味は果てしなく深いです。貴族的で華やかな英国サルーンに対して、いかにも社用車然としていた5erとEクラスに一体どんな変化があったとおっしゃるのか?

  長ったらしい前振りは全てはこの格言を解釈するためのものなんですけども、E39の時分には5シリーズは、911ターボのように全開でコーナーを抜けていけるくらいに、乗用車のレベルを超えた前輪操舵性能があった!!アストンやジャガーの2ドアスポーツですら前輪フィールが怪しくなる領域で、フルサイズの4ドアセダンの重量ボデーを搭載した改造乗用車が、圧倒的な旋回性能を見せるなんて!!現代の乗用車のエンジニアリングレベルにおいてはありえないことだと思います。どっちも。4ドアに遅れをとるスポーツカーにも問題があるし、スポーツカーを軽く出し抜くフルサイズ改造セダンにも問題がある!!

  マジェスタの改造車が、フェアレディZを超える旋回性能を発揮するなんて一般的にはありえないことですよね。もし実現したとしたら・・・おそらくそのマジェスタには、あのトヨタ独特のエアサス仕込のフワフワ感などあるはずもないです。エアサス=高級車という短絡的な結論もどうかと思いますが、高級車の素養としては定番の機構ではあります。エアサス的な乗り味とは真逆のキャラを示されてもなお「高級車」と断じるのは、全方向に対して失礼なことじゃないですかね。

  つまりE39・5シリーズは、そのキャラに照らし合わせると「高級車ではなかった」わけです。そもそもMTでガシガシ動く段階で意味合いが違うよなー。「4枚ドアのMT」くらいしか共通的はないですけど、スカイラインGT-Rに近いコンセプトをフルサイズセダンで実現しました!!ドイツ自動車産業の「魂」は、アウグスト=ホルヒやヴィルヘルム=マイバッハの時代から一貫してスケールのデカさにあると思っていますが、1999年に発売されたE39・M5は世紀末になってもそれを体現していました。

  続くE60・5シリーズですが、これも今改めて乗ってみると、良い点も悪い点も含めてちょっと笑っちゃいます。「堅牢なドア」と「盛大なロードノイズ」・・・これはセダンの皮を被った装甲車か!?。程度の差こそありますけど、なんだかランボルギーニ・ウラカンの雰囲気に似てるかも「スポーツカールックな戦車」。これまた程度の差がありますが、トヨタ86の「硬質感」がちょっと近いです。ハンドルの奥には何やら鎖かチェーンで繋がれた「重厚感のあるギミック」が潜んでいそうな不気味さ。CVTのトヨタ車しか乗ったことがない人にとっては「強烈」だと思いますよ。

  そして福野さんが「高級車になった」「史上最強の5シリーズ」と断言するF10になります。まず違うのは「だいぶ静粛性が上がった」ことですね。しかしこれで5シリーズに納得した福野さんみたいな人がいる反面で、なんだか「物足りない」と感じる人も多かったように思います。せっかくの「セダンルックな装甲車」が、「BMWのバッジがついたマジェスタ」になっちまいましたから。「なった」はさすがに語弊があるので「近づいた」くらいにしておきましょう。トヨタと日産がバブルの頃に競って開発した、静粛性と乗り心地を極めるために開発した前ダブルウィッシュボーン、後マルチリンクのサス配置からも、BMWの動揺ぶりが伺えます。

  なんで変化したのか?BMWに詳しい人にとっては愚問でしかないですけども、やはりアウディの躍進にBMWが飲み込まれたのが相当にショックだったようです。北米レクサスとして展開されていたセルシオの静粛性に対抗するために、アウディが「ホルヒ」の精神に立ち返って「ザ・高級車」を開発しました。特に2005年の3代目アウディA6の登場はあまりにもセンセーショナルでした。デザイナーは和田智さんです。ドイツ本国では一気にアウディに追い抜かれたBMWのショック!!引責辞任したアメリカ人デザイナー(クリス=バングル)に責任を全て擦りつけたのは・・・人種差別!? 

  日本のデザイナーとアメリカのデザイナーが競えば、なんとなく日本が勝ちそうな気もしないでもないですけど、アウディA6に引っ張られて個性を『溶かした』BMWのやり方には「賛否両論」ありました。BMWがアウディやレクサスみたいな「高級車」を作ったところで、700万円も払う価値あるの!?・・・けど福野さんは決してアウディのコピーとは言わないです。BMWの「看板」として新たな付加価値を持って登場した!!そう「定義」されました。・・・ちょっとややこしいですけど、この「定義」って非常に貴重だなと思うんです。「◯◯と同じだな・・・」で結論するのは『定義』ではなく『同類項』。

  リーマンショック&大震災という厳しい時代にぶち当たって、日本では存在感自体が薄れてしまったF10・5シリーズですが、このクルマの引退に『史上最高傑作』と「餞け」をする福野さんは最高にかっこいいと思います。そして新たに登場したG30・5シリーズの評価ですが・・・これがなかなか難しいみたいです。続きは次回にしましょう。


 
↑高級車というプラットフォームは完全に狙っていないスタイリング。だから美しい!!

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↓『セダンの皮を被った装甲車』が170万円(35000km走行)です。もちろん直6NAです!!


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